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誰よりも上手な頭蓋底外科医になりたい

現在、台湾におります。

日本頭蓋底外科学会と台湾頭蓋底外科学会はMOUを結んでいることから、これから毎年定期的に開催されるTAIWAN-JAPAN頭蓋底手術コース、そして台湾頭蓋底外科学会に招待していただいています。

頭蓋底外科は、脳神経外科・耳鼻咽喉科・形成外科が一緒になって診療・研究を行う領域なので、さまざまな話を聞くことができる、とても面白い学会です。

一方で、まだまだ参加者の大半は脳神経外科の先生方です。

今回も、日本頭蓋底外科学会からは脳神経外科の先生方が複数参加され、耳鼻咽喉科からは僕一人という状況でした。

もちろん、「耳鼻科が少ない」ということを言いたいわけではありません。

むしろ今回は、そのおかげで脳神経外科の先生方とゆっくりお話しする機会をいただきました。

しかも、頭蓋底外科学会を代表するような先生方ばかり。

いわば、超一流の先生方です。

せっかくの機会なので、台湾の先生方とお話しするのはもちろんですが、日本の脳神経外科の先生方ともいろいろとお話をさせていただきました。

その先生との会話を、少しお裾分け。

「今、頭蓋底外科医として何を目指しているんですか?」

そう聞いたところ、

「誰よりも上手くなりたい」

と。

めちゃくちゃシンプル。

でも、とても心に残りました。

世界中の医師が知っている、日本を代表する脳神経外科医の先生が、そんなにシンプルな言葉を言えることが、とても素敵だなと思いました。

「なぜ、そこまで思えるんですか?」

と聞くと、

頭蓋底外科という領域は、他の領域に比べて術者の能力の差が結果に出やすい。

「この人には取れないけれど、この人なら取れる」

ということが、実際に起こりやすい領域なんだ、と。

なるほどな、と思いました。

僕自身がこの領域に夢中になれている理由は、これまではできなかったことができるようになって、そのことによって、これまで助からなかった人たちが助かるようになる。

あくまでも、

「自分の技術の問題」
と
「患者さんの問題」

この2つが中心だと思っていました。

でも、気がつけば、

「他の先生が手術をしても治すことができなかった患者さんが、僕の外来に来て、僕が治すことができる」

ということが、いつの間にか当たり前になっていました。

それが自分がこの領域に夢中になれる理由の一つなのかもしれない。

今回のお話を聞いて、そう思いました。

そして、もう一つ、とても面白い話がありました。

「いつまでも上手くなることを目指すことは、組織のためでもある」

という話です。

自分が上の立場になったときに、

「もう自分は手術をしなくていい。後輩に教えよう」

となる。

すると、自分の97%くらいのレベルの後輩が育つ。

その後輩がまた上の立場になったときに、同じように後輩を育てる。

すると、またその97%くらいのレベルの後輩ができる。

それを繰り返していけば、最終的には、その医局全体の臨床技術は少しずつ落ちていってしまう。

だからこそ、

「自分自身のレベルが上がり続けていれば、自然と後輩たちのレベルも上がっていく」

という話でした。

確かに、その通りだと思いました。

実際、僕の下で働いている先生たちは、僕が彼らと同じくらいの年齢だった頃と比べると、はるかに上手です。

自分自身が成長し続けることが、後輩たちの成長にもつながっている。

これは、すごく大切なことなのかもしれません。

僕自身、これまでは、

「自分がマネージメントする立場になったら、自分が専門としてきた疾患を少しずつ後輩たちに譲って、自分は別の領域に進もうかな」

なんて考えていました。

でも、

やーめたっ!!

だって、それが患者さんのためだし、
後輩たちのためだし、
そして、世界の鼻科のためだもんね。

「誰よりも上手くなりたい」

このシンプルな言葉。僕は、「誰よりも患者を治したい」という言葉で考えていたけれど、今一度考えてみようと思います。