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やる必要がある時にやる

最近緊急手術が多い。今の働き方改革と、緊急手術もしっかりとした質を担保して行うというのは、かなり逆行しているものではあるが、まあそんなことは置いておいて、緊急手術をやる必要がある時に、できる環境があるというのは、外科医として本当にありがたい。手術をしたくても、そもそも入院が可能かどうか、手術室の受け入れ、麻酔科の受け入れ、看護師の余裕など様々な要素が絡み合って手術が可能となる。術者の都合が合うかどうかなんて、そのうちの小さな一つの要因でしかない。だからこそ、術者の都合で本来するべき手術をしないだなんておこがましいことを言ってはならないと思っている。

僕の母は、虫垂炎の緊急状態の時に、送られた病院が夜間の緊急に対応してくれず、急性腹症のかなり状況が悪いことになってしまった。送った先の病院の判断が僕らの判断と乖離がある状況になってしまったことに対して、かなりストレスだったし、後悔をした。後日担当医から謝罪をされたが、誰が悪いわけではない。その病院の能力以上だっただけだ。

以前地方の病院に勤務していた時、別の病院で手術をした患者の術後出血の救急依頼があって、本来なら手術をした病院に行くべきなのに、その病院は夜間で対応ができないということだった。まあそんなことはよくあることだから、当然のことながら受けたら、きた患者は知り合いだった。もう少し遅かったら、出血多量で命も危なかった。

別の患者はサージセンターで手術をした翌日に出血して、その病院に連絡したら、術者が夏休みで海外にいるから対応できないと言われたということで、僕のところに来て、緊急の手術をした人もいた。

もちろんその逆もある。地方の患者さんがわざわざ東京まで来て、退院したのちに大量出血して、近くの病院で入院加療をして一命を取り留めた人もいる。

ごちゃごちゃ長い文章になったが、みんなのちょっとした努力でまわっている。目の前の患者を守っていると、自分の患者も誰かが守ってくれている。力の続く限り、誰よりも守ってやる。

大村和弘