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嗅覚改善させる手術方法が論文化できました

以前、我々が行っている下垂体手術後の患者さんたちの嗅覚を調べた時に、嗅覚が悪くなるのではなくむしろ良くなっている印象があるというデータが出たため、この方法が嗅覚改善に使えるのではないか?という内容に着目して、慢性副鼻腔炎の方々に、嗅覚改善するのかどうか?科学的に調べた論文がアクセプトされました。めちゃくちゃ嬉しー。お世話になった日大准教授の菊田先生、本当にありがとうございます。筆頭著者の海老原先生もおめでとう!!

嗅覚を感じるのは、嗅列という非常に狭い場所にしっかりと気流が入るかどうかによります。慢性副鼻腔炎の方は、その場所にポリープなどができてしまい、気流がうまく入りません。だからと言ってポリープを狭い場所の中で処理をすると術後に癒着と言って、処置をすることで嗅列が閉じてしまい、気流が入らなくなってしまいます。これによって医原性に嗅覚がなくなってしまうという、嗅覚を良くする目的で手術したのに、逆に悪くなってしまうというかなりショッキングなことになってしまいます。海外の先生たちは、狭い場所でのポリープ除去なんてもってのほかということで、ポリープがあるのにそこは全く触らず術後にステロイドというポリープを小さくする薬で鼻を洗浄させるという方法が一般的です。

日本は以前から嗅列を可能な限り広げて、ポリープを処置し、術後はそこが癒着しないようにシリコンを入れたり、ガーゼのようなものを入れて対応していました。とはいえ、可能な限り広げるその方法は、力で押し広げるというようなもので、患者さんの骨の硬さや、術者の力加減によって差の出てしまう方法でした。しかもあまり力を入れてしまうと、頭蓋底損傷をしてしまうというリスク付き。

そこで、今回僕たちはとても簡単だけれど、有効に嗅列を広げる方法を使って(これは下垂体の手術では毎回やっていた方法)に着目して慢性副鼻腔炎の患者さんに対してでも非常に有効に嗅列を広げることができ、さらに処置をした後も癒着がしにくく、嗅列が広くなって嗅覚がよくなるということを証明することができました。これはかなり革新的な方法だと僕らのチームは思っています。日本全国から不十分な嗅列の開大による医原性の嗅覚障害がなくなることを願いながら、この手術方法を世界に広めていきたいと心から思っております。

大村和弘