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料理と外科手術         三流シェフ・調理場という戦場を読んで

ダイヤモンド社から出ている三流シェフという本を読みました。

少し前に調理場という戦場を読んで、料理人と外科医で非常に似ているところがあると思ったので、今回もついつい手に取ってしまいました。

想像は大当たりで、本当に面白かった。

自分の技術一つで世界と戦っている感じが、今の自分の状況ととても似ていると思うことができ、改めて強い意志を持って世界と戦うということを心に誓うことができました。

本の内容は書くつもりはありませんが、一流シェフはも一人一人がオリジナリティを強く意識していると思うので、外科医としても自分のオリジナリティというものをしっかりと意識しないといけないし、何を言われても自分の正しい、そのさきに患者への利益があると思うことに正直に向き合い続けないといけませんね。

僕の領域で言うならば、

僕はなるべく鼻腔の構造物は残せるものは残して手術をしてあげたいと言うスタンスで色々手術を組み立てていますが、その一方で、世界的にはそんな難しいことしないで全部とっちゃえば良いと言うような、僕からすれば過剰な効率化や技術の軽視による理論

鼻副鼻腔癌・鼻腔腫瘍を一塊に摘出すると言うことも、僕ら以外の施設では日本でも海外でも難しくて出来ないと言うような技術ではあるけれど、やはりそれをやることで患者さんにメリットがあると信じているからやっている。その一方で世界は一塊に摘出することは技術的に難しいし、そんなのは手術時間もかかって効率が悪い。腫瘍をどんな形でも取り切って術後に広範囲に放射線を当てれば腫瘍は制御できると言うような理論

欧米は患者数も多いし、それだけのデータベースを持っているので、なんとなく言っていることが正しいように聞こえるけれど、やはり自分や自分の親族にやってほしいと思う医療を信じてやっていきたいと思います。

医療だって、患者のためと言いながら、患者に自分の信じる医療が今までの伝統的なものや世界のスタンダードと違う場合は、それを認めてもらうには戦わないといけない。僕が立っているのは調理場だけでなく手術場という戦場なんだと元気もらいましたー。やっぱ本はいいな。

今日ピッツバーグに入りました。世界で最初に頭蓋底手術に対して内視鏡を使い始めた老舗です。どんなレベルの手術なのかめちゃくちゃ楽しみです。

アイキャッチの写真は、ブラジルの頭蓋底の巨匠のアレクサンダーフィリップ先生とです。僕の手術スタイルを大変応援してくれている先生です。

東京慈恵会医科大学 耳鼻咽喉科 大村和弘