先日、僕の尊敬している後輩が、「大村先生、とても面白いことがわかりました」と言ってまとめたデータを持ってきてくれた。2012年から2026年までの15年間で担当させていただくことのできた100名にも及ぶ嗅神経芽細胞腫の患者さんのデータをまとめてくれていてわかったことだ。100名を越えるというのは、本当に光栄なことだが、毎日死にもの狂いで外来や手術をやって、追われている最近の毎日でほとほと疲弊をしていたが、このためにやっていたんだと疲れが吹っ飛んだ。世界でこの腫瘍について一番発表している病院は、MD ANDERSONのHANNA教授のチームなのだが、インターネットで調べたら25年で150件とのことだった。(手術外の患者も多数含まれている。)僕たちの施設の100名というのは、ほとんどが手術の患者であるし、僕が慈恵医大に戻ってきた2018年から2026年の7年間の患者数が大半である。25年で150名と7年で100名弱という、世界一の施設に負けず劣らずの症例数である。
ちょっと前まで、HANNA教授が学会で講演している様子を客席から輝いている星を見るような気持ちでいたけれど、気がつけばもうそこまできた。もちろん件数だけの違いではないのは十分承知しているが、日本の病院がアメリカの病院よりも優れていることは沢山ある。手術技術はもちろんだし、医療保険や病院への受診のハードルの低さなど含めてだ。そのことで自分たちの施設の治療成績は非常に良いこともやっぱり嬉しい。高い技術や整った医療制度や公共交通機関、そして低い垣根。これらのおかげで非常に高い成績を残すことができている。これからそれらをどんどん世に出していく。
彼の報告を聞いていて、自分たちの施設で圧倒的な症例数のもと、新たにわかってくることがあり、それを元にまた治療を少しずつ修正することができそうだ。こうやってデータを元に、治療方針や患者さんへの説明内容が少しずつ変えることができるのも、とてもやりがいがある。
そんなブログを書いていたら、今度は放射線診断部の後輩から、新しく診断で知りたいことを患者さんたちのデータを使って研究したいとメッセージをもらった。前回のブログで【道】というテーマを書いたが、最近今までの手術患者さんのデータをまとめることで、様々な医療者たちに【道】も提供できていることがわかった。データインフラも本当に大切だし、嗅神経芽腫以外の膨大なデータもまとめているので、たくさんの人たちとこのデータを使って、世の中に還元していきたい。
大村和弘