先日、ウクライナの学会から、国際的で、有名な頭蓋底の講演をできる人を一人推薦してほしいという依頼が、日本耳鼻咽喉科学会を経由して、日本鼻科学会に届いた。その結果光栄にも、私が発表することになった。日程は日本鼻科学会から聞いていたが、二日前になっても全く音沙汰がない。本来なら公式の依頼状などが大体半年前くらいに届いて、タイトルや発表の調整がされる。まあ、ウクライナだし色々と不安定なのだろうと思って、様子を見ていたが流石に二日前、むしろこっちがメールを見落としていたりすると大変失礼なことになる。日本側の事務局にも何もなし。仕方ないので、日本に依頼をしてきた医者のメールアドレスにメールを送ってみたら、ぜひ動画を送ってほしいとのこと。英語の録音もしてほしいとのこと。えっ、二日前だけど?まあ、仕方ない。色々不安定だろうから。と自分に言い聞かせて、ほぼ徹夜で作り動画を送る。録画スライドは無事に届いたらしく、ズームのリンクが送られてきて、詳細はホームページを見るようにとURLが書いてある。本来なら、何日の何時から、何分間のプレゼンテーション(質疑応答込み)などとわざわざホームページを見に行かなくても、わかりやすいように情報を送ってくれるものだが、まあ仕方ない。色々不安定だから。と言い聞かせてホームページを見に行くと、プログラムはまだ作られていなかった。何も見るものがない。会場の建物の写真くらい。仕方ないから、公式の依頼書とプログラムなどを質問したら、無事自分の名前が入っているプログラムを送ってくれた。驚いたことに、他にも世界の重鎮たちが5人ほど講演を予定されていた。日本時間夜10時20分から20分の講演。僕の後はニューヨークのこれまた頭蓋底でとても有名な先生の講演。自分が講演した後、この先生の講演を聞いて、寝ることとしようと思って、準備をしていた。
念の為、インターネットの回線に不具合などがあると思うので、21時30分に入る。おーやっている。ウクライナの言葉で何もわからないけれど、学会だ。ただ、自分の前の先生はアメリカで働いている日本人の講演だったはず。その前の人もブラジルの先生だったはず。あれ?これはきっと信じられないくらいおしているに違いない。嫌な予感。
やっとブラジルの先生の発表が始まったのが、僕の発表予定の時間だった。めちゃくちゃハイテンションで当然のことに2倍くらいの40分の堂々たる講演、その次の日本人の先生はきっちり20分。流石日本!!気がつけば23時30分。かれこれ3時間もかかっている。遅れ過ぎているので、ニューヨークのレジェンドもズームに入っている。自分の顔をズームに写して、準備万端「よし行こう」と思ったら、ウクライナ語で、読み上げられた名前は僕の次のレジェンドの名前。「??」もしかして飛ばされた?まあどうせ聞こうと思っていた講演だから、100歩譲って、良しとしよう。念の為メールで問い合わせをすると、「時間の都合であなたの順番は飛ばしました」とのこと。どういうこと?このレジェンドの次に発表できれば良いか。と思い、とりあえず飲み込んで、気持ちを作り直す。まあそのレジェンドの発表もむかーしの発表の使い回しで結局全然面白くなかった。発表が終わった。引き攣る顔をバレないように、めっちゃ笑顔で、また動画をオン。前回は声を出さなかったけれど、今回は声を出して「ハロー」と日本人とすぐにわかる発音でアピールする。その瞬間ホストがすかさず僕のマイクをミュートにしてくる。この対応ははえーな。
次の発表はオハイオ大学のリカルド教授。内視鏡を頭蓋底手術に初めて使ったこれまた巨匠。でもこの人は午前中の発表の予定だったはず。完全に録画でズームにももちろん参加していない。ズームに3時間半入り続けている日本の代表の医者と、録画のプレゼンテーションを天秤にかけられて、無視される。これは流石に我慢ならない。僕だけでなく、日本を馬鹿にしている。
メールを見ると、流石に声を出してアピールしてきた僕の対応に驚いたのか、20分ほど待ってくれれば発表の場所を準備するとのこと。流石に待つわけないでしょ。もう。こんなにRESPECTの無い対応をされたのは初めてで、驚きを隠せない。日本に対する侮辱だと思っている。という趣旨のメールを送って、発表を辞退してしまった。
改めて振り返っても、怒りがおさまらないけれど、怒っているのは全く生産的で無いので、自分の学びに変えるように考える。きっとウクライナの人たちからすれば、名も知らない大村は本当に小さく見えたんだろうと思う。だから全ての書類をすっ飛ばして、早く動画送れとか言ってこれるんだろう。そして僕の隣に出ているレジェンドの名前のズームアカウントに気を使って、プログラムを都合よく変えてしまったんだろう。自分に置き換えると、こっちが知らない耳鼻科医や、医学生そして高校生たちも含めて、そのような人たちにしっかりと一人の人間としてRESPECTを持って接する必要があるということを、改めて考えさせられた。そして改めて、向こうのニーズがあまり無いところに自分が労力を割くのは、時間と労力と精神の無駄だということを感じさせられた。
大村和弘